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空手から和良久へ 〜前田比良聖のあゆみ〜

3.消えていった闘争心・神様との誓い

ほどなく私は正道会館主催の「第一回全日本空手道選手権大会」参加のために帰国することになりました。

帰国後は思うところあって本部道場には行かず、京都の南禅寺の「慈氏院」通称「だるま堂」というお寺にお世話になり心身の整理をすることにしました。

早朝より山中に入り滝行と立ち木を相手に技を磨き、日中は座禅に没頭しました。そこでの体験は、いままでに経験したことのない神仏への帰依心とともに、戦いに勝ちたいという欲が泡雪の如く消えていくという、当初の目的とはまったく別の意識を発芽させました。

ついさっきまで、殴り合いに明け暮れていた私のその闘争心は、滝水の流れとともに虚無心へと変わりました。
「なぜ闘わなければならないのか」
その理由が突然見えなくなってしまったのです。

いよいよ大会前日、私は行をした南禅寺の山中の清掃をさせていただきつつ、こんにちまで修行を見守って下さった神仏に対し、ある誓いを立てました。

「私は明日の試合で自分の生きる道を決めたいと思います。
私は皆との約束を果すため出場はします。
しかし戦いません。
戦う理由が見えなくなってしまったのです。
私は相手を傷つけることが出来ません。
ただ受けの構えを取って立っています。
神様、よきように私を動かしてください。
そして、この試合で優勝すれば、このまま正道会館に空手の師範として残ります。
でなければ、神様…私に世の中にとって何か役に立つことをさせて下さい」

 

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