特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座

誌上講座573 あわてずゆっくりと、ゆっくりと

~自分を見失わないために

血が体内を一周する時間が
約22秒と言われます。

この血の流れる時間に合わせて、
螺旋を描きながらゆっくり体を動かします。

そうしますと、体がほどよくゆるみ、
呼吸が穏やかになります。

それによって血流が穏やかになり、
体がぽかぽかと温かくなります。

少し眠たくなりますが、言霊の発声により
決して眠りに陥ることもないのです。

自力をもった他力を受け入れる状態に
入ります。

半分寝ていて、半分起きているという、
脳波にとって安定した状態に入ることができるのです。

うつらうつらの状態・・・このときに様々な
驚くべき現象が起きます。

記憶の奥にあった遠い過去のことを
思い出したり、

不調である体の具合が改善されたり、
気持ちが爽快になったり、

また、この時に物事を覚えると
記憶に留まったりします。

技についても、いままで意識もせず
素通りしていた部分も、ゆっくり動くことによって、
実はその部分がとても大切なポイントだったんだ
ということも理解できます。

肉体的には、腰を入れるとはどういうことか・・・
と言うことがゆっくり行うことによって分かってきます。

和良久では技を行うとき円を描いて一周回ります。

この一周円を描くことが体に捻りをつくり、
そのひねりが腰に響いて、
より腰がパワーアップいたします。

ゆっくり行えることが出来れば、速くやっても
大丈夫ですが、最初から速くやっていると
ゆっくりやったとき雑であることが多いものです。

つまり、技と言うものは、
ゆっくり正確に出来ることが大切なのです。

極意はスローなリズムの中にあります。

眼の付け所についても、周囲をゆっくり
見渡していくことが出来ます。

ポイントから、瞬間次のポイントへの
視線の移動ではなくて、ポイントからポイントへの
空間の様子がクリアに見ることが出来ます。

仔細なことも見落とさないでいく
繊細な気持ちを養えます。

呼吸について言えば、長く吸って、長く吐くという、
呼吸が「長息」となって息の出し入れが
ゆったりとします。

長息は、そのまま「ながいいき」と書き、
それは「長生き」つまり長寿につながります。

早く強く吐き、そして吸うというのは、
例えば電気を一気に大容量で急に流したりするようなもので
体にとって良いことではありません。

健康を望むなら、呼吸をゆったりと行う習慣を
もつことです。

特に息を吸う時など鼻を使って行うことをしないと、
口ばかりで呼吸をしていると
体内に黴菌が入って病気を引き起こしてしまいます。
鼻はフィルターの役目をしているのです。

また、空気の温度を調節する働きもあります。

冬、冷たい外気温を直接体内に
入れてしまうということを避け、
鼻で適温に調節して体内に入れます。

そして、これらの温度調節作用、除菌フィルター作用、
また匂いを感じさせる作用を行う秘密が
何と「螺旋」なのです。

鼻の真ん中には鼻中隔という軟骨の壁と、
甲介というヒダがあり、これが空気が鼻を通る時に
空気の流れを「螺旋」に変えてしまうのです。

空気が渦を巻くことで、空気が適度に加温加湿され、
ほこりや塵を吸着し、肺の中に
冷たい乾いた空気が入るのを防ぐのです。

この鼻による空気の螺旋吸収が
体を守っているのです。

鼻による呼吸によって、
空気が螺旋の水火に変わるということ、
また体内に螺旋の力を取り込むことなど、
鼻呼吸は改めて大切なことが分かります。

話は極端に変わりますが、
近年、地球の自転速度が速くなっていると
言われています。

人が忙しく感じ、またイライラする人も多いのは、
あるいはこれに関係するのかも知れません。

夜昼逆転の生活が普通になりつつある近代人です。

確かに人間の体内時計がおかしくなっているのは
事実でしょう。

さあ、稽古によって、あわてず、ゆっくりと
落ち着いて動く時間をもち、体内時計の針の加速を止め、
もとのリズムを取り戻しましょう。

自分を見失わないためにも。