特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座

誌上講座600 言霊の現象化(2)

まず、簡単に剱の立会いにおける「スウアオエイ」
の応用について申し上げます。

いま立会いの作法が終わって
相手と向かい合っている状態とします。

最初に左手に持っている剱に右手をかけて、
それを正面に直立させます。
このとき左手は剱の下方を持っています。

これが「ス」であり、直立剱です。

心を天に委ね「われに力を与えたまえ」という
絶対他力の心境であり、祈りの状態です。

スは、また「天命を知る」時と言えます。

次に、両手が剱のシノギに入って降ろしつつ
水平にして剱尖を相手につけます。

この時、剱は中田の位置にあり、上田、下田を、
また水(右肘)、火(左肘)を剱尖に集約させます。

これが「ウ」であり、水平剱です。

気持ちを剱尖に集中し、相手の懐に入っていく
気迫と、「こうしたい(こう打つ)」と言う目的意識
をもった、強い集中的自力の状態であります。

スの「天命を知る」に続き、
ウは「人事を尽くす」時と言えます。

また、幽から顕への移行であります。

お互いに「ウ」の力で間をしめあって、
気力の充実が極みに達するのを待ちます。

この「ウ」の強さ如何で、次の「打ち」の威力が
決定します。

さあ、充分に腰が落ち、力を充実させた
ウの凝縮力で爆発現象が起きます。

その爆発の勢いに乗って「打ち」を発するのです。

打ちは、「アオエイ」の言霊の
何れかを選択して発射します。

いわゆる「言霊を打つ」のです。

「ア」であれば、その吐く息か、
吸う息かの何れかを選びます。

吐く息なら「重(じゅう)の剱」で
「解」と言う打ちになります。

吸う息なら「軽(けい)の剱」で
「凝」と言う打ちになります。

ここでは、吐く息、つまり重の剱である
「解」を説明しましょう。

ウの爆発で、発生したエネルギーを「打力」
に変えます

打力は、八力になり、それは八方向に向けて
発射されます。

打つ際には、「アの重」であれば、
剱の手付けを「解の位置」に入れて打ちます。

つまり、上に上昇して後、
落下してくる旋回で解を打つのです。

「アの軽」であれば、下降して後、
上昇する旋回で打ちます。

「・・・オエイ」も同様です。

これを、お互いに向き合って稽古を行います。

これを稽古でどう行っていくか?
・・・ちょっと再現して見ましょう。

■第一段階の稽古~水火を入れるということ

この稽古により、打ってなお、相手の中に力
を通すということを学びます。

いわゆる透徹力、浸透力と言われるもので、
武道にとってとても大切な「技の効き」に
かかわるものです。

慌てないで、ゆっくり行う稽古です。

<「アの重」の組打ち>

①相対し、剱をとってお互いに「ウ」の位置に着けます。

②そして「ウー」と発声しながら、つけた剱を相手に
もっていき、相手の剱尖とドッキングさせ、
軽く押し合います。

③押し合いが極まったら、次に「アー」と発声して
手付けを「解の位置」に入れて
ゆっくり内回り旋回をし、解を打ちます。

④静かにお互いの剱が綺麗に十字形に組まれます。
この時、まだ「アー」と発声は続き、
押し合っています。

・・・このように、言霊を長く響かせて、
その音響に合わせながら剱を打つ方法をもって、
相手の体内(中心)に向かって
水火を入れていく感覚を身に着けるのです。

■第二段階の稽古~水火を発射するということ

上記の水火を入れるということが分かったなら、
次に勢いよく水火を発射させるということを
稽古します。

これにより、強さ、速さを身に着けます。

<「アの重」の組打ち>

基本的には、第一段階の稽古と同じ
ですが、言霊を引き伸ばさず、元気よく
発声します。

「アーー・・・」ではなく「アッ!」と言う風にです。
いわゆる「気合術」といったものになります。

例えば銃を発砲するときの発砲音のようです。

まず向かい合って剱をつけます。

①「ウッ!」と発声して後、気迫をもって入り
身に入ります。

②相手の剱尖に触れる瞬間、今度はすかさず
「アッ!」と発声して解を打ちます。

③勢いよく旋回するお互いの剱は、
「カーン」という音をたてて組み合わされます。