特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座

誌上講座681「八雲琴と剱」

手付けを正確に行うことは、
剱をもって言霊の法則を学ぶに際し、
最も重要な稽古であることは言うまでもない。

手付けと言えば楽器を思い起こす。

笛なら穴を押さえ、ギターなら弦を押さえ、
ピアノなら鍵盤を叩く。

このようにドレミの音を確実に押さえてこそ、
美しい旋律が生まれる。

剱も正しく手付けを行うことによって
八力がはたらく。

すなわち、
ドレミならぬアオウエイという言霊の旋律が生まれ、
それを複合させることにより、
さらに微細な音律75声が生じる。

手付けによる剱の旋回によって呼吸が生じ、
その呼吸に合わせて動きが生まれるのだ。

それはまるで素晴らしい交響曲にのって
心と体が弾むのにも似ている。

剱はそういう意味で楽器と同じだ。

楽器と剱の関係は深い。

素戔嗚尊は、剱の法則に沿って琴を作られた。

琴の名は八雲琴と言う。

その琴の姿は竜神と言われる。
剱もまた竜神と言われる。

ヤクモ「八つに組む絡む」コト「言」の意であり、
やはりこれも剱同様、言霊父音のアオウエイより生ずる
八つの力~八力を表す。

剱はヤマタノオロチから取り出された。
オロチと言う邪を破って正しきが顕れた
・・・破邪顕正である。

どちらも冒頭に「八」がつく縁をもち、
どちらも八力の水火が渦巻き、
そして八方を祓い清めるのに用いる。

剱は鶴亀であり、それは釣る義であり、
弦(ツル)義である。

八雲琴は火と水(陰陽)の二本の弦をもって奏でられる。

剱も火(棟)と水(刃)の対極する形でつくられている。
これ霊体一致を表す。

また、お琴を弾くのを「掻き鳴らす」と言う。

剱の働きである天之沼矛(あまのぬほこ)も、
漂よえる国土を神が矛をもって「シホコホロコホロ」と、
かきならして造り固めた、と言うように
「かきならす」という表現を用いている。

「かきならす」は、「掻き鳴らす」「確成らす」で、
言霊の法則(天地結水火)と威力(八力)をもって、
秩序を正しめたと言う意味である。

お琴を弾くときは、
左手を横(左右)の動きをもって糸を押さえ、
右手で縦(上下)の動きをなし、
右旋左旋させて弦を弾き音を奏でる。

その音は父音アオウエイを基本音声となし、
その父音が複合して75声を奏でる。

その音律の波動は螺旋を描き、
天地人の水火の悪しき部分を掻き取り、
正しき水火に置き換え、
正しい穏やかな状態に「成らす」のである。

剱もまた同様の手の動きをなす。

すなわち、左手(火)は横に、右手(水)は縦に動き、
アオウエイの手付けによって右旋左旋をさせて
螺旋運動を起こし75声の水火をはたらかせる。

八雲琴は、神事をなすために弾くことや、
俗曲を弾いてはならないなどの厳しい戒律がある。

剱も神事のための技であり、
宴席や勝負事など俗なことのために
披露してはならない。

八雲琴は、他感法、つまり鎮魂祭などを執り行い、
他力をもって鎮魂帰神を行う際に用いられた。

剱は、鎮魂帰神の神術を自力でやりとげる法であり、
これを自感法と言う。

八雲琴の底板には月の形の穴があけられている。

これを鏡板と言う。鏡は火火水(カガミ)と書く。

また琴には房に玉が通されている。

竜神は玉を抱き、陸海空を駆けて玉を守護し運ぶ役をもつ。

玉は霊、魂である。

実に琴は、琴玉であり言霊の鏡なのである。

剱は「水水火」と書いてツルギと読み、
水気をコントロールする月のはたらきをあらわす。
月はやはり鏡である。

月の引力は、地球の水を動かす。

それは螺旋運動をおこし、丸い球体「玉」を形成する。

その技は、対する相手の力を鏡のように反射する力を発し、
相手と自分をまったく釣り合わせる「釣る義」の現象を現す。

これを言霊剱と言う。

八雲琴と剱は、それぞれにおのずと
璽鏡剱の三種の神器を保有するものである。

このように八雲琴と剱とは法則がまったく同じである。

素戔嗚尊の神威を現すものであるから当然であろう。

ただ音(音声)で現すか、
水火の力(呼吸)で現すかの違いである。

琴は音声を、剱は呼吸を表現する。
音声と息は言霊の基である。

横にすれば琴(言)となり、
縦にすれば剱(水火)となる。

竜神、地にありて波のように震え
音響を発してナイフル(地震)をおこし、
空にありては昇降し真空放電しつつ
イカズチ(雷撃)を放つ。

八雲琴は、文政3年に
愛媛県出身の中山琴主が出雲神社に参籠した時
神慮を得て復活させたと言う。

剱も、1960年に愛媛県出身の奥山忠男が
亀岡の大本において復活させた。

また、愛媛県に在りし空手名人芦原英幸は
八幡神宮の守護により竜神の技(螺旋)を会得す。
そこへ前田内弟子入りし技を受け継ぐ

次いで昭和58年大本入りし奥山忠男に師事。
15年後大本四代教主出口聖子師の命名により
武道名和良久を拝命。

奇しくも、全員「愛媛」に所縁がある。

■基本的な手付けの稽古

以下の順で手付けの稽古を正確に行う。

内旋  凝ー解ー分ー合ーウーウ

外旋  ウーウー動ー静ー引ー弛

手付けがさらさらと行えるように幾度もなすべし。

■「八力は霊魂を支持すといえども、
 霊魂は実によく八力を鼓動す。

八力を鼓動して、その強盛を増せば、
すなわち霊魂もまた強盛を益すなり」

本田親徳先生

■以上のように、霊学の大家本田先生は
 「八力」をもって鍛錬することにより
 「一霊四魂」が強盛を益すと言われている。

■手付けを正確に行い、八力を運用することによって
 心を磨くのである。