特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座 誌上講座

誌上講座535


演武奉納の心得


稽古も進み、ある程度ご自身で
技も出来る方も出てまいりました。

ここまで技を覚えるのに
大変であったろうと存じます。

さて、技がある程度演じられるようになりますと、
私もそうでしたが、人にそれを誇りたくなる気持ちが
湧いてまいります。

何か人と違ったことが出来だすと、
公の場で披露したいと思うのは
自然な気持ちかも知れません。

見せて、驚かせて、褒められて・・・

人が出来ないことが出来るというのは
優越感があって楽しいものです。

ところが場を間違えると大変なことになります。

ことに、酒宴の席で、ほろ酔い気分も手伝って、
周りの人たちが・・・

「あなた武道やってるんだって?
せっかくだからちょっと、どんな技か見せてよ」

などと言われ、皆の拍手に送られて
お大道芸人みたいに、つい調子にのって
前にしゃしゃり出てしまいます。

でも気をつけてください。

特殊な場合を除いては、
こういった席で技を披露するのは要注意です。

まず、あなたの技を讃美する人ばかりでは
ないということ。

場が場であるので、大半があなたを珍し半分、
面白半分で見ているだけです。


茶化して野次を飛ばす人もいるでしょう。
言うだけならまだしも、
非難する人があなたの前にずかずか出て来て、
もしこう言ったらどうします。

「なんだ、その変な動きは」

「実戦に役立つのか?俺のパンチを受けてみろ」

・・・などと、力ずくで
あなたの技をつぶそうとする者が
でてくるかもしれません。

そうなったら、あなたはどうします。

嘘とお思いでしょうが、これは時々あることなのです。

昔の話ですが、空手時代、私があるところで演武したとき、
場がよくなかったのか、
わざと邪魔をしようと思ったのかは分かりませんが、

「そんなのインチキだ!通用するものか」

このように、ある男が言いがかりをつけてきました。

私は「よし、そう言うのなら、
どっからでもかかってこい!」

と、技の確かさを実証する良い機会、とばかりに
挑戦者を張り倒し、大勢の前で
強さを実証したことがありました。

挑戦があったら絶対に背を見せない・・・
これが既成武道家の基本精神ですので
仕方がありませんでした。

空手時代は本当によく
いろんなところで演武をしました。

宴会の席、自治会のイベントの席、VIPの席、
お笑い番組の席、歌謡ショーの席・・・など
多彩です。

どんなところででも出向いて技を披露しました。
場を選ばなかったのです。

主に、試し割りといって、瓶を手刀で切ったり、
ブロックやレンガを割ったり、バットを折ったり、
人が驚くようなことを行いました。

双方本気で殴りあう実戦の試合も見せました。

「どうだ、強いだろう」と鼓舞するのが目的でした。

素人の人たちは喜んで見ていました。

そのように、いわゆる、空手は、
何にも知らない人でも分かる、
酔っ払いの方でも理解できる類のものでしか
なかったといえます。

そこに次元の高い崇高な香りは微塵も無く、
ただ破壊殺傷の場面が展開されるだけでした。

サーカスや、大道芸と
何ら変わらないものでしかなかったのです。

アクロバット的な妙技と
強さを見せ付けて人の関心を買う・・・

どこからかいくら崇高な理念を引っ張り出しても、
それが既成武道の性根なのです。

場の空気が和の気に満ちておらず、
水火の整っていない所で、
つまり副守護神の巣窟みたいなところで
自慢げに技を披露すると、
かならず反発する作用がはたらきます。

我々の技の動きは、
和合を招来させる「螺旋」です。

呼吸を整え、姿勢を整え、
崇高なる存在に気持ちを向け、
厳かなる気に満たされた場であるなら、
あなたの技は、その気に同調して受け入れられ、
あまつさえ多くの人たちに感動を与えることでしょう。

しかし、酒宴の席や娯楽の場は、
副守護神が表面に現れていることが多いので、
受け入れられるどころか、反発を買う結果になります。

和良久は、これら既成武道と比較はできませんが、
稽古するものにとって
注意していただきたいことがらであると思います。

私は、空手の時代に限らず、和良久になってからも、
幾度か演武を行ってきました。

それは決して落ち着いた神聖な場ばかりではなく、
先ほど言いましたように、
宴会の場や娯楽の場もありました。

さあ、そうしたら後が大変でした。
ものすごく神様に叱られたのでした。

本来ご神前で行うべき技を、
そうでないところで行った報いは速やかで、
心がけが良くなかったことを強く反省いたしました。

また、神の戒め、これは演武だけではなく、
稽古の中においても何度もありました。

『剱以外に他力を求めてはならない』
という戒律を忘れて、素手をもって稽古を行った時でした。

和良久は、剱だけではない、
素手の技でも卓越した強さがあるんだ・・・
と誇示したい気持ちもあったんだと思います。

さあ、その稽古の帰り、早速戒めが下りました。

私は必死で神様にお詫びをしました。

せっかく造りだした螺旋波動を
崩すような行為を行ったんですから
仕方がないのかもしれません。

鋭角波動には、鋭角波動が同調して、
鋭角な世界を現します。

下記のことを心に留めてください。

■宴会などの席で行わないこと。

■娯楽目的で行わないこと。

■場が不適切な場所で行わないこと。

■ご神前で行う「奉納」については、
事前に精進潔斎を行い、服装は、
私服平服はもちろん遠慮願います。

出来れば稽古着ではなく、男子は着物に袴姿、
女子は着物にこの花帯の姿が望ましいでしょう。

和の礼装をもって望むけじめを持ちたいものです。

続く・・・