特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座69

無刀取り

こちらは素手、そして相手が剣を持って、打ちかかって来たときに、
こちらは逃げず、逆に打ちかかっていく・・・

しかし、その打ちかかっていく相手は自分自身。

それにより成立する技が「無刀取り」です。

気迫をもって相手の懐に入り、
相手の剣を吾が剣とすべく取り上げて投げる技ですが、
これは力んで気張ってやっては出来ない技です。

例えば、風のように、柳の様に、水の様に、木の葉の様に。

・・・このように変化してこそ可能になると言えましょう。

無刀であることは、決して不利でも何でもなくかえって剣が無いため
自由に動けるものです。

剣に対し、剣をもって相対することに熟達すれば
次にある境地は無刀取りです。

相手の剣の太刀筋を、十分に飲み込めば決して
難しいものではありません。

相手が何処をどうやって、打って来るのか?

それは自分がどうやって相手を打つか?
・・・を思えば答えは出てくるものです。

相手の心が、吾が心の鏡に写し出され
相手と一体となったとき、相手の動きは手にとるように分かってきます。

無刀取りは、相手と同一の動きをすること・・・
これに尽きます。

簡単に言えば、相手の剣で自分を打つのです。
相手と一緒になって自分を打つ。

自分は相手と対せず、自分は自分と対するのです。

そうするとき、自他の動きは同一化され、
いつの間にか相手は敵でなくなっています。

この無刀取りの技も、螺旋運動の応用に過ぎません。

自分の中心と、相手の中心をピタッと合わせるのです。

呼吸も、相手の吐く息、または吸う息と合わせます。

そして自分自身に向って勢いよく打つのです。

その時、なぜか足元に倒れているのは相手なのです。

弱い自分を打ち捨てるときにこの技は実現します。

相手を倒そうと意識しない時に可能になります。

争わずに、合わせることにより成立する和合の妙技であると言えます。


続く・・・