特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座224


問答集 (21)


「剱と刀と、どう違うのですか?」


ある武道の伝書にはこんな言葉があります。

「殺人刀 活人剱」

端的に、それぞれの役割を表した
よい言葉だと思います。

剱は「ツルギ」と読み、霊と体、神と人、他と自など、
相対する存在を釣り合わせる儀と言う意味でもあります。

その形状は、真っ直ぐで、上下、左右が
バランスよく作られています。

上部を鶴のような鋭角さをもたせて「霊」を表し、
下部は亀のような安定感をもたせて
「体」を表しています。

鶴と亀と書いて「ツルギ」と読むことからも、
その儀が伺えます。

ツルギの扱い方は、上は天に垂直に伸び、
下は地に水平に降ろす、と言った
明確な稼動範囲で振ります。

天に上げた時、垂直から後方へいかないようにし、
地に水平に下げた時は、水平の位置から
下に下げないように気をつけます。

それは剱を扱う者の体(腰)を壊さないよういする為と、
天を仰ぎ、神のその高さ尊さをを讃美し、
地に伏せてその大地の広さと恵みに感謝するのです。

稽古で相手に打つ時も、決して相手の中心軸を
薙ぎ払うような打ち方をしません。

相手の中心軸に「頑張って」と、
活力を与えていくつもりで打ちます。

これを「活人剱」と言います。


対して、刀は、かたなぎ也で、
人をかたっぱしから薙ぎ払う為のものです。

その形状は、物を切りやすくするため
「反り」をもたせてあり、冷たく光る刃からは
温情など微塵も感じることが出来ません。

刀の扱い方は、相手の中心を活かすことなく、
中心を越えてフルスイングします。

つまり相手の中心を切断するのです。

中心の軸は、天と人とをつなぐ、真っ直ぐな線です。
この中心軸を断ち切るということは、
その人の命を奪うことなのです。

これを「殺人刀」と言います。

剱は、人を活かすためのものであり、
刀は、人を殺すためのものなのです。





続く・・・