特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座387


「鎮魂、そして腹で動く」


相手の打ちがどうこから、
どう来るのか分らない・・・

皆様には、そういった稽古に身を投じて
いただいていますが、いかがでしょうか?
うまく相手の打ちを組めていますか?

「次はこう来るに違いない」
でも、そのことごとくが外れていませんか?

「解と思っていたのに弛だった・・・」

「しまった!」と言った顔をして稽古されている方を
たくさんお見受けしますが、いかがでしょう?

眼で動きを追って、頭で考えて予想を立てている間は
皆様の剱はことごとく空を切って、
相手の剱があなたの身に襲い掛かっていることでしょう。

眼で相手の剱の動きを追うことを止め、
また、頭で考えず、その頭の機能を停止させ、
ひたすら、あなたに「他力の加わる」のを待ち、
無心になって動くことです。

すなわちこれ「鎮魂」です。

剱を持って静かに相手に向かって構えた姿がありますね。
この姿勢こそ言霊発声の稽古で行っている状態なのです。

これを「スウアオエイの状態」といい
「全き球体の顕現」ともいいます。

最初は少々タイミングが遅れてもかまいませんから、
「分った」ら動いて下さい。

こうだから、こう・・・
頭でそういった方程式を立ててはなりません。

体で感じて動くのです。
肌で相手の剱の風を察知するのです。

風を感じたらその方に体を向けて下さい。

体は知っています。
あなたがどう動けば良いのかを。

体で感じ、体に聞くためにはこうしてください。
体の中心、つまり腰で動くという基本を守ることです。

手首のスナップや腕のスイング、
また足のステップなどで動いてはなりません。

それらを使えば「腰」の役目が務まらず、
腰の出番がありません。

腰を使いたければ、手、足の自由を休止させることです。

そして腰を使えば、「腹」が働き出します。
重要なのはこれです。

腹が働けば「下田」が発動し、下田が発動すれば「中田」
そして「上田」が稼動し始めます。

これが、先にいいました「スウアオエイ」の状態です。

●下田〜和魂「オ」・荒魂「エ」〜上下運動

●中田〜直霊「ウ」〜前後運動

●上田〜幸魂「ア」・奇魂「イ」〜左右運動

腰を使えば腹が働き出し、腹が働くということは
体内エネルギーの源泉である「丹田」が活動します。

この丹田に火が着けばもうしめたものです。
「一霊四魂」「八力」の活動が開始するからです。

腹〜丹田は何でも知っています。

あなたが何をすればいいのかを。
どう動けばいいのかを。

また、腹で動くようになると相手に怪我をさせたり、
また自分が怪我をしたりすることも無くなります。

腹は善悪の基準を知っています。

こう動けば相手に危害を加えることになる、
だから動きはここまでにしておく・・・

また、ここから先に行けば自分が危ない、
だからここで止まるんだ・・・

そういったことが本能的に働き、
自己の動きをコントロールし、制御します。

驚くべき腹の特性です。

稽古において、眼で相手の剱を追うと
速くてついていけないし、
また螺旋する剱を眼で追うと眼が回ります。

また、頭で考えて動くということですが、
ただでさえ相手と向かい合って
一生懸命打ち合っているのです。
頭に血が昇って冷静さを欠いていますから
危険極まりありません。

受けはしくじるし、剱のコントロールは乱れて、
お互いに怪我をする確立がうんと高くなります。

血が昇った頭で考えず、
落ち着いてどっしりした腹で考えませんか。

まずは何事も鎮魂からです。

日本武道とは「鎮魂帰神の神術」であり、
それは大神様の御心を覚るために
行うものであることを忘れてはなりません。


続く・・・