特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座248


「素手の技」(3)


素手は木剱を使った動きと違って
「何をやってもOK」という規則制に乏しいジャンルです。
ですから、自分の体も知らず知らずの内に
壊していってしまう危険性をもっています。

腰の回転と逆の方向に手足を動かす、呼吸を止めて動く、
大声を出す、怒りに任せて戦闘的な技をかける・・・。

比較的動きが簡単なので入っていきやすい気軽な雰囲気があります。
ですから、つい調子にのって動きたいように動いてしまいます。
すると後であそこが痛い、ここが痛い・・・といった故障が出てきます。

こんなことを言ったら叱られそうですが、
素手は「道を求めない」人たちにはうってつけの自己破壊体操です。
剱を使った稽古を行ってみると、その動きの正否が判断できます。

凝、解、分、合・・・など、動きがそれらの腰の働きと
符号しているのか?それが基準です。

柔道、剣道、空手、合気道、または各種スポーツなど、
「気軽で、楽しく、誰にでも出来る・・・・あなたも強くなれる・・・」
この歌い文句につい、つられて入っていきます。

しかし、そんな気軽なものをやって本当に強くなれるのでしょうか?
本当に役に立つ強さが得られるのでしょうか?

その前に、その指導者にどれほどの経験があり、
また実戦というものの厳しさをどれほど理解しているのでしょうか?

強さについて考えてみましょう。

昔の話ですが、アメリカである講習会が行われました。
確か、警察が催したようなのですが、
それは強姦にあった時の対処についてでした。
ご存知のようにアメリカはこういった犯罪が後を絶たない国です。
ですからたくさんの女性が講習を受けに来ました。

屈強な大男が、全身を厚いプロテクターに身を包んで、
室内に登場しました。強姦魔扮する警察官です。
さて、何十人かの講習を受ける女性が
部屋の周囲に緊張の面持ちで座っています。

係官の「なりふりかまわず、どんな方法でもいいから、
この男から逃げてみなさい」という指示があります。

女性たちは順番に前に出て、この強姦魔に襲われることを想定に
本番さながらの訓練が始まりました。

空手をやっているという女性、ボクシングをやっているいう女性、
カンフーをやっているという女性・・・

しかし、いざ訓練が始まって襲われたら、
もうどんな武術の技を使っても
荒れ狂った犯人役の男性にはまったく役に立ちません。

女性は、プロテクターに身を包んだ相手に殴る、蹴るをしますが、
すぐねじ伏せられて押しかかられています。

泣きながら、大声で叫びながら、必死で抵抗を心みています。
それはまったく本番さながらの光景です。
しかし、どうしようもない逃げられない現実。
下手に暴れたため殺されてしまうケースもあると言います。

結局間に合わせの小手先の護身術など役に立たない・・・
ということを皆に知らしめるための講習でした。

一体本当に使える技とは、どんなものなのでしょうか?


続く・・・