特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座 誌上講座

誌上講座424


「1〜3の間」


遠い向こうに幾人かの人が立っていますが、
一体自分の相手は誰なんだろう?

・・・そう思い、背筋を伸ばし、
心と体を中心に戻して心を澄み切らせます。

息を凝らして、向こうを見やると、
あちらからもこちらを見ている人がいます。

体の正中線(頭の頂上から鼻筋をとおり、
みぞおち、そして臍に通じる一本の線)を、
その人に向けて相対すると、線と線がぴたっと合い、
同時に息も合います。

つまり、相手の中田と、自分の中田を合わせた、
相互ともに「ウ」の状態です。

「ああ、自分の相手はこの人だ」う確信します。

お互いが眼を息を合わせ、体を合わせ、
動きを合わせます。

どちらともなく、ほぼ同時に「礼」が起こり、
引かれるようにして歩み始めます。

「ス」の言霊そのままに、「すー」と近づくのです。

徐々に近づいていきますと、
相手の呼吸の温かみが伝わってきます。

そして、やがてお互いの劒の間に差し掛かります。

劒と劒が交わす距離まで3〜5歩手前となります。

ここまでが、第一の間で、ここから第二の間です。

間が近くなり、相手の呼吸が熱く感じられます。

この熱気に触発され、劒を静かに構え
剣尖を相手に向けます。

益々、腰が落ち、腹に力が入り
「ウ」の状態となります。

そして、それから約3歩。

もう、これ以上近寄れない、一触即発の間。
「ウ」の極みに入ります。
呼吸も、体も爆発寸前です。

あと一歩入れば劒の激突です。
この間が第三の間です。

さあ、どちらから打つ?
しばし、息の探りあいが続き、
そして一気に解き放たれたように
アクションが起こります。

お互いが「ウ」の状態の極みゆえ、
そのお互いの呼吸は、火と水の、つまり
プラスとマイナスの電極のスパークのように
激しく火花が散るごとくぶつかります。

私は、この時の現象を
宇宙創生時のビッグバンのようなものだと思っています。

ウの極地が生み出す、新たな力の発生。
そして、ここからすべてが始まるのです。

「ス」からへの「ウ」の移行、これが「間」です。
この稽古により、静かに、
しかし激しくほとばしるエネルギーの動きを感じます。

動く鎮魂と言ってもいいと思います。

また、人生の出会いから別れというのも
間の稽古と同じようです。


続く・・・・